脳の機能 ②具体的な原因
脳に影響を及ぼし、知性と行動および精神の機能不全の原因となる状況は以下のとおりで す。
・ 薬剤の副作用
有害な副作用は、過剰に多いまたは少ない薬剤の摂取、薬剤への異常反
応、薬剤の組合せから生じます。
高齢者は、一般用医薬品に加えて、様々な医者によって処方された多数の異なる薬剤を摂取することがよくあります。
・薬物乱用
薬物乱用(合法または違法)および過剰なアルコールは、精神的損傷を引き起こすことがあります。
高齢者はそれらの使用を許容し、また使用から回復する能力に欠けます。
過剰なアルコール摂取はまた、肝臓の損傷を引き起こし、しばしば痴呆症を導く 肝臓障害の危険性を増加させます。
・代謝異常
食欲が少なく、料理や買い物をするエネルギーが少ない高齢者において、甲
状腺の機能不全、貧血症、栄養不足はよくあります。栄養素の吸収不良は、精神的機能に
対して非常にマイナスの影響を与えます。症状が「単に老化の過程」によるものと考えら れるとき、高齢者はこれらの問題に気付いていない場合があります。
・神経疾患
多発性硬化症と正常圧水頭症(脳内の髄液の増加)は、精神的機能に影響を 与える 2 つの神経疾患の実例です。
・感染
脳は、ウィルス、細菌、菌類の感染を受けやすい。
痴呆症を引き起こす極めて珍しい脳感染にクロイツフェルトヤコブ病があります。
それは自己複製しながら(狂牛病)、組織に損傷を与える特別な蛋白質(プリオン)によって伝染します。
他のより一般的な病 原体は、血液脳関門を通過して脳感染を引き起こすことも知られています。
・外傷性障害
頭部外傷は、一時的(脳震とう)または長期的な精神的損傷の原因となる 可能性があります。外傷は病歴と検査に基づくほとんどの事例で明らかです。
しかし高齢者によくみられるある頭部外傷は、いつもはっきりとわかるわけではありません。血液が脳細胞組織へ漏出する状態を硬膜下血腫といいます。
この種の損傷は、きわめて最小の外傷後に発生し、出血が少ない場合、非常に徐々にゆるやかに発症します。
症状は頭痛、錯 乱・無気力で、しばしば非特異的です。
・毒性の因子
一酸化炭素やアルミニウム、水銀、鉛、カドミウム、ヒ素、ニッケル、空気中の糸状菌、メチルアルコールのような物質にさらされることは、精神的損傷を引き起 こします。
・ホルモンの変化
老化に伴うホルモンの変化は、近年のなって明確に証明されています。
たとえばホルモンのエストラジオールとプロゲステロンの突然低下は50歳頃の閉経と関連 しています。
ほてりや骨密度の低下、膣の乾きのような症状に加えて、気分の変化・判断力の低下・疲労のような精神的機能が変化された症状は一般的です。
男性において、テストステロン量は時間とともに徐々に低下していき、筋組織と骨密度の低下を導き、腹部の脂肪やコレステロールが増加し、心臓機能の悪化および精神や性的な変化が起こり、精神 的機能に影響を与えることがあります。
・腫瘍
脳の異常組織の増殖(腫瘍)は、原発性(脳内に起源がある)の時もあれば、転移性(身体の別の部分の腫瘍を起源とする組織の「種」、および血液脳関門を通過した「種」) の時もあります。
転移性腫瘍がより一般的なものです。脳腫瘍の約 70%が良性であるにも かかわらず、認知機能不全の一因となります。